特集 ワクチンの安全性と社会学—HPVワクチンの接種はなぜ広まらないのか?—
Ⅱ.HPVワクチンについて
5.ワクチン報道はなぜ偏った報道になったのか
-—バイアスが生じるメカニズムを考察する—
小島 正美
1
M. Kojima
1
1食生活ジャーナリストの会(代表幹事)
pp.315-319
発行日 2021年3月1日
Published Date 2021/3/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000001662
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新聞やテレビは基本的に「弱者」に寄り添って,「共感」を得る動機でニュースをつくっていく。そして,「過去の間違い報道を修正することを嫌う」。この2つの行動原理がワクチン報道を歪んだ方向に向かわせた。
ニュースの役者は三者いる。「被害者(弱者)を後押しする市民団体」,「正義を自認する学者」,「政府を批判する弁護士」が現れれば,ニュースのお膳立ては完成する。メディアは現状を変えようとする勢力に耳を傾けるため,弱者,学者,弁護士の三者が歩調を合わせて現状を変えようと訴えれば,それに飛びつく習性をもつ。しかし,その勢力の言説が間違っていた場合,メディアはその勢力を批判することはない。撤退して終わりである。形勢を逆転させるには,メディアに新たなニュース素材を提供する必要がある。
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