特集 卵巣癌の手術up to date
9.痛恨症例から学ぶ2:卵巣癌の術後リンパ囊胞の対応に非常に苦慮した痛恨の1例
伊藤 公彦
1
,
下地 香乃子
1
K Ito
1
,
K Shimoji
1
1関西ろうさい病院産婦人科
pp.515-520
発行日 2018年5月1日
Published Date 2018/5/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000000431
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卵巣癌ⅢC期に対するprimary debulking surgery(PDS)後に発生した,難治性リンパ囊胞の対応に苦慮した痛恨の症例を経験した。PDS後2カ月で骨盤内に多発するリンパ囊胞を認め,穿刺排液やドレナージ,ミノマイシンや無水エタノールによる硬化療法,経リンパ節リンパ管造影塞栓術などの各種治療を実施したが難治性であった。発症から軽快までに3カ月を要し,うち入院期間は38日間に及んだ。さらに,リンパ囊胞の軽快直後より両下肢リンパ浮腫が出現し,リンパ管吻合術やリンパ管移植術が必要となった。後腹膜リンパ節郭清は卵巣癌の標準術式に含まれ,その診断的意義は確立しているが,治療的意義は不明とされている。リンパ節郭清に伴う術後合併症・後遺症のリンパ囊胞やリンパ浮腫は,患者のQOLを著しく低下させる病態であり,その実施には十分な説明や配慮が必要である。
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