[連載] 最近の外国業績より
感染症
日本医科大学小児科学教室
pp.736-739
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.18888/sh.0000003521
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背 景 乳幼児におけるrespiratory syncytial virus(RSウイルス)感染症は,生後数か月の間にとくに重症化および死亡リスクが高く,生後3か月未満の乳児で致死率が最も高い.とくに低所得国における乳児では,高所得国にくらべて重症化しやすい傾向がある.RSウイルスは,細胞膜と融合することで細胞内へ侵入し,増殖する.現時点でRSウイルス感染症に対する治療法は対症療法のみであり,予防策として用いられるモノクローナル抗体ニルセビマブ(nirsevimab)は一定の有効性を示すものの,非常に高価である.RSウイルスの気道感染は,ウイルスと細胞膜の融合が鍵となっており,これを阻害することが有効なワクチン開発の鍵とされる.RSウイルス融合前F蛋白(RSVpreF)に着目したワクチンは,この融合を防ぐ作用があり,妊婦への接種により新生児および乳児におけるRSウイルス関連の下気道感染症を予防できる可能性がある.

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