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特集 末梢神経―Current Concept in 2022
Ⅹ.最近の話題
Neuroplasticityの歴史と概要
Neuroplasticity;history and overview
平田 仁
1
Hitoshi HIRATA
1
1名古屋大学医学部,人間拡張・手の外科学講座
キーワード:
Neuroplasticity
,
Central nervous system
,
Neural network synaptic pruning
Keyword:
Neuroplasticity
,
Central nervous system
,
Neural network synaptic pruning
pp.725-731
発行日 2022年4月30日
Published Date 2022/4/30
DOI https://doi.org/10.18888/se.0000002145
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要旨:神経科学の急激な発展により,中枢神経系が従来信じられていたよりも遥かに柔軟なシステムであり,生涯にわたり環境に応答して変化し続けており,また外傷や疾患による組織障害に対して想像以上に頑健であることが明らかになってきた。中枢神経系のほとんどの領域ではニューロンの増殖は観察されず,ニューロンの総数も生下時をピークとして生涯にわたり減少し続ける。さらに,中枢神経系は軸索再生阻害因子を豊富に含み,成長円錐は崩落して軸索再生も抑制されている。明らかに末梢神経系とは異なり増殖や再生を基盤とする修復メカニズムが働きにくい環境に置かれている。しかし,この不利な条件下において中枢神経系は学習により機能を高め,また,システム障害にも柔軟に対処している。この不可思議な現象に対してWilliam Jamesはplasticityという表現を用い,また,Jerzy Konorskiは1948年にneural plasticityとの用語を造った。しかし,概念的で実体の見えない現象とみなされ,この用語は長きにわたり普及することはなかった。1990年に始まる “decade of the brain” は神経科学の急速な発展をもたらし,その中でneuroplasticityがより動的に制御されている実態が明らかになってきた。その結果,臨界期にみられる構造的なneuroplasticityを成人期に再度誘導して麻痺の回復を誘導する新たな治療の模索が始まっている。
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