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脛骨顆外反骨切り術(Tibial Condylar Valgus Osteotomy;TCVO)は1989年,千葉剛次により開発された変形性膝関節症に対する新しい術式である1)。またTCVOという名称は千葉剛次の依頼で,故 岩崎勝郎 長崎大学整形外科 主任教授により名づけられたものである。TCVOの手術コンセプトは変形性膝関節症に対し両顆同時接触させることにより,膝関節の接触面積を増大させ,関節面の単位面積あたりの荷重圧を減少し,症状は軽減させることである。手術術式はmedial tibial condyleをL形に骨切り,内側関節裂隙を接触させたまま,脛骨外側関節面が外顆に接触するまで開大矯正を行う。下肢のアライメントのことは考えない。したがって荷重線を外側に移動させるだけのHTO(high tibial osteotomy)とは全く異なった術式であり,HTOの一種とはいえない。最近,長崎大学膝グループでTCVOといって行われている骨切りこそ似ているが%MAで下肢のアライメントを矯正指標にしたり,Paleyの変形矯正の指標を用い下肢のアライメントを矯正する秋田大学整形外科膝グループの手術コンセプトとは千葉剛次が初めて発案したTCVOである両顆同時接触のコンセプトと全く異なると言わざるをえない。これらの方法は術式は同じでもTCVOではなくHTOと同じ下肢のアライメント矯正手術だと考えている。2017年5月に仙台の日本整形外科学会総会のとき,TCVOの発案者であり,私の師匠である千葉剛次先生とTCVOについて話す機会があり,下肢アライメントの指標である%MAなどを用いた方法はTCVOではないという意見で一致した。このことはTCVOを考え,さらに発展させてきたわれわれへの千葉剛次からのメッセージだと考えている(図1)。
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