特集 イラストで見る消化器癌手術アトラス
Ⅰ 外科解剖 7 肝門部領域胆管癌に対する左3区域切除術に必要な外科解剖
藪下 泰宏
1
,
松山 隆生
1
,
三宅 謙太郎
1
,
澤田 雄
1
,
本間 祐樹
1
,
遠藤 格
1
1横浜市立大学医学部消化器・腫瘍外科学
キーワード:
肝門部領域胆管癌
,
肝左3区域切除
,
脈管解剖
Keyword:
肝門部領域胆管癌
,
肝左3区域切除
,
脈管解剖
pp.697-701
発行日 2023年5月31日
Published Date 2023/5/31
DOI https://doi.org/10.18888/op.0000003319
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肝門部領域胆管癌に対する基本術式は左右の片葉肝切除,もしくは左右3区域肝切除に,尾状葉および肝外胆管切除を組み合わせたものとなる。そのなかで左3区域切除術の適応となるのは,左側優位のBismuth typeⅣの肝門部領域胆管癌の症例とされ,Bismuth typeⅣで右3区域切除の適応となるものの残肝容量が不足する症例や,Bismuth typeⅢbの症例でも前後区胆管合流部への浸潤が疑われる症例なども考慮すべき適応とされる1)。しかし,肝胆膵高度技能修練施設においても左3区域切除術の90日死亡率は10.3%と報告されている2)。NCD(national clinical database)からの報告でも90日死亡率は14.6%と報告されており3),非常にリスクの高い術式といわざるを得ない。左3区域切除術を施行すると残肝は後区域のみとなり,残肝予備能が切除安全域ぎりぎりとなることも多く,残肝血流障害や胆汁排泄不全は術後肝不全を惹起する。そのため,術中操作に伴う不用意な胆管,血管の損傷は術後の致死的合併症に直結する可能性があるため,術前の脈管走行を中心とした局所解剖の理解が必須となる。とくに門脈を中心とした胆管,動脈の位置関係などバリエーションも多く存在するため,その局所解剖の理解と,個々の症例における術前のシミュレーションが重要である。
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