手術手技
膵切除後膵液瘻に伴う仮性動脈瘤形成予防のための手技的工夫 ─生体吸収材料ネオベール®の利用法を中心に
岡田 克也
1
,
合川 公康
1
,
高瀬 健一郎
1
,
渡邉 幸博
1
,
岡本 光順
1
,
小山 勇
1
1埼玉医科大学国際医療センター肝胆膵外科
キーワード:
膵液瘻
,
仮性動脈瘤
,
生体吸収材料
Keyword:
膵液瘻
,
仮性動脈瘤
,
生体吸収材料
pp.1175-1180
発行日 2018年6月15日
Published Date 2018/6/15
DOI https://doi.org/10.18888/op.0000000758
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
膵切除(膵頭十二指腸切除,膵体尾部切除)に伴う膵液瘻は,現在でも膵臓外科領域において大きな問題であり,各施設で膵液瘻予防のためのさまざまな工夫がなされている。膵消化管再建法では,膵管腸管粘膜吻合に加えBlumgart変法などが主流となり,膵液瘻を低減させ得ることが示されている1)。しかしとくにsoft pancreasでは,再建手技による膵液瘻の完全予防は難しいと思われ,一定の膵液瘻が生じることを念頭に置く必要がある。このことから,再建法の工夫による膵液瘻の予防に加え,膵液瘻に伴う重篤な合併症を予防することがより重要と考えられる。膵液瘻に伴う重篤な致死的合併症の1つに,動脈断端(胃十二指腸動脈,脾動脈など)の仮性動脈瘤形成がある。近年,肝動脈などに利用可能な血管内ステントの開発(ゴア®バイアバーン®ステントグラフト)など,仮性動脈瘤に対するIVR(interventional radiology)技術は進歩しているが,現在に至ってもその発症後の致死率は高く,仮にIVRを施行し得たとしても重篤な肝機能障害などを生じることが問題である2)。これまで,膵液から動脈断端を保護し仮性動脈瘤を予防する方法として,大網や肝円索などの腹腔内組織を用い動脈断端部を被覆する手技がある3)。われわれは大網を被覆する方法で良好な結果を得ているが,この方法は大網の壊死や感染が問題となるほか膵液瘻を助長する可能性があるとして,現在は推奨されていないのが現状である。
Copyright © 2018, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.