巻頭言
人間万事塞翁が馬
藤田 靖幸
1
Yasuyuki FUJITA
1
1旭川医科大学皮膚科学講座,教授
pp.1087-1088
発行日 2025年8月1日
Published Date 2025/8/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000005316
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「人間万事塞翁が馬」は前漢時代の哲学書『淮南子』に由来する故事成語で,私の座右の銘の一つです。昔々,中国の塞(国境近くの村)に住む老人が飼っている馬が国境の外に逃げてしまい,村人たちは不幸を嘆きました。しかし老人は「いや,これは良いことが起こる前触れです」と返しました。数カ月後に,その馬は別の立派な馬を連れて村に戻ってきて,村人は幸運だと喜びましたが,老人は「いや,これは悪いことが起こる前触れです」と言いました。ある日,老人の息子がその立派な馬に乗っていたら落馬し,骨折してしまいました。村人達は不幸を嘆きましたが老人は(略)。その後まもなく戦争が始まり村の若者が徴兵されるなか,足を怪我していた息子だけは徴兵を免れ,命が助かったのだそうです。このように,人生では「何が幸いで何が災いかは,その時にはわからない」ものであり,常に穏やかな気持ちで物事を受け入れる姿勢の大切さを説いているように私には映ります。せっかく執筆の依頼をいただきましたので,少々恥ずかしいですが私の塞翁が馬を開陳したいと思います。
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