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近頃oncology(腫瘍学)という言葉を耳にする機会が増えてきました。Oncologyという語は,ギリシャ語で「腫瘍」を意味する “onkos” に,「学」を意味する接尾語である “-ology” をつけたもので,癌や肉腫などの悪性腫瘍(癌)に関する医学の分野の一つとされています。Oncologyはその診療分野ごとに,腫瘍外科学(surgical oncology),腫瘍内科学(medical oncology),腫瘍放射線学(radiation oncology)などとよばれますが,本来の意味から考えて,臨床から基礎医学までもをあわせた幅広い分野を含んでおり,単に手術を主体とする外科的分野や薬物療法などの内科的分野のみを意味するものではありません。Oncologyで皮膚腫瘍に関する分野はdermatologic oncology(dermato-oncologyないしはdermatological oncology)ですが,残念ながらわが国でこの呼称に遭遇することは少なく,広く認知されているとはいえません。これは欧米の白人に比べて皮膚悪性腫瘍の発生数が著しく低いことや,腫瘍に関するわが国の皮膚科学が研究と診断学を主体に発展してきたこと,皮膚悪性腫瘍に対して有効性の高い薬物療法が少なかったことなどが影響していると思われます。前述したようなoncologyの概念からすると,dermatologic oncologyは皮膚腫瘍の診断,治療,研究や抗癌剤による皮膚障害への対策,さらにはサポーティブケアまで含むもののはずです。しかしながら,わが国ではまだまだdermatologic oncologyイコール「皮膚外科」と思い込んでいる皮膚科医もみられます。
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