綜説
角膜クロスリンキングの現状と未来
原 雄将
1
,
山上 聡
1
1日本大学医学部視覚科学系眼科学分野
キーワード:
円錐角膜
,
keratoconus
,
角膜クロスリンキング
,
corneal cross-linking
Keyword:
円錐角膜
,
keratoconus
,
角膜クロスリンキング
,
corneal cross-linking
pp.805-808
発行日 2025年9月5日
Published Date 2025/9/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000004277
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円錐角膜(keratoconus)は角膜中央部から傍中央部が菲薄化し前方突出することにより強度の近視性乱視と不正乱視が出現し視力低下をきたす両眼性の角膜疾患である。角膜の変化は思春期頃に始まり,30~40歳代で安定化する傾向がある1)。円錐角膜の発症頻度は1.38/1,000人程度とされている2)。病因は多因子とされていて,複数の遺伝子変異の報告,気候,地理的などの環境因子,眼をこする癖やアトピー性皮膚炎などの外因的要因が関与している3)。初期の軽症例では自覚症状がほとんどない場合や眼鏡装用管理が可能であるが,中等度以上の進行例では強い乱視のために眼鏡矯正が不良になり,ハードコンタクトレンズによる矯正が必要になる。重症例では最終的には急性角膜水腫(acute corneal hydrops)を発症する。Descemet膜が破裂するため,一過性の角膜浮腫と視力低下をきたす。急性角膜水腫は多くの場合は数か月で自然治癒するが,角膜の実質に瘢痕を残すため,全層角膜移植や深層層状角膜移植術の適応となる。これらの治療選択肢は視力矯正を目的としているが,円錐角膜には進行を抑制する治療があり,それが角膜クロスリンキング(corneal cross-linking :CXL)である。円錐角膜患者の約10~20%は最終的に角膜移植が必要になるが,CXLを導入してから約25%角膜移植数が減少した4)。現在国内では未承認治療となっている。

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