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角膜拡張症のひとつである円錐角膜は原因不明の角膜変性症であり,進行性に角膜の前方突出,部分的な菲薄化を認める疾患である。脆弱な角膜が眼球の内圧に耐えられず変形することで強い不正乱視が生じ,進行すると矯正視力の低下を引き起こす1)。ペルーシド辺縁角膜変性症やLASIK後のケラトエクタジアを含む角膜拡張症の治療として,軽症なものは眼鏡やコンタクトレンズでの屈折矯正が可能である。不正乱視が少なく眼鏡矯正で良好な視力が得られる場合には有水晶体眼内レンズやトーリック眼内レンズによる矯正が有効な場合も存在する2)~6)。しかしこれらの疾患には進行性が認められる。重症化した症例に対する治療としては角膜内リングや角膜移植が行われるが,術後視力の予測が困難であったり,感染症や眼圧上昇,移植後拒絶反応など術後管理の問題も散見されたりするため,重要なのは重症化を予防することであり,軽症のままで進行停止に至らしめるための有効な手法であるのが角膜クロスリンキング(CXL)である。CXLはリボフラビンと紫外線との反応を用いて角膜を強化する手法である。ビタミンB2の一種で光感受性物質であるリボフラビンが長波長紫外線(UVA)で励起され活性酸素(一重項酸素)を産生し,一重項酸素の作用で角膜実質のコラーゲン線維間の架橋結合が増加することで角膜全体の剛性を強化する。1990年代に動物実験として開始され,2003年にはWollensak,Seilerらにより進行性円錐角膜に対して施行された,角膜拡張疾患に対し進行予防のエビデンスを有する唯一の治療法である7)8)。本邦としては2007年頃から報告がなされ(厚労省未認可),2016年には米国食品医薬品局(FDA)からの承認がおり各国への普及が進んでいる。長期成績としては10年間の臨床成績や多施設研究,複数のランダム化比較試験の報告それぞれで有効性が報告されている9)~16)。またCXLの出現により円錐角膜に対する角膜移植件数が半減したという報告17)もあることから,CXLはいまや進行性円錐角膜に対しての標準治療となってきている。しかし,どの報告においてもCXLは進行停止効果と併せて角膜平坦化が認められることは共通しているが,視力への影響については報告により異なり,議論が分かれるところである。
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