綜説
Coats病
成瀬 翔
1
,
近藤 寛之
1
1産業医科大学眼科学教室
キーワード:
Coats病
,
Coats disease
,
網膜毛細血管拡張
,
網膜滲出
,
抗VEGF薬
Keyword:
Coats病
,
Coats disease
,
網膜毛細血管拡張
,
網膜滲出
,
抗VEGF薬
pp.527-532
発行日 2025年6月5日
Published Date 2025/6/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000004178
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Coats病はGeorge Coatsが1908年に初めて報告した原因不明の疾患である1)。Coatsは若い男性に起こる大量の滲出液を伴う摘出眼の病理組織学的特徴を報告し分類した。その後1956年にReeseが定義を改良し,現在では網膜毛細血管拡張と網膜動脈瘤を特徴とし,結果として滲出液の網膜内ないし網膜下への貯留をきたす疾患と理解されている。Morrisらによるとイギリスにおける人口あたりの発症率は10万人あたり0.09人であり2),3:1の割合で男性に多く,ほとんどは片眼性の発症(852)~100%3))である。黄斑部毛細血管拡張症1型(MacTel type 1)がCoats病の変種であるとする説もある4)。若年性の発症が多いが,成人発症も認められる。成人発症では性差はないとされ,高コレステロール血症や糖尿病,高血圧が関連している5)。発症時期が若いと症状が重篤な傾向があり,44%の患者は病院受診時に失明しているとの報告もある6)。Smithenらは成人におけるCoats病では疾患領域の範囲が狭いこと,進行が遅いこと,大血管の拡張部付近で出血が起こりやすいことを特徴として挙げている5)。予後は疾患の程度によって異なり,軽症で高齢の症例では予後が良く,自然退縮することもあるが,3歳未満の小児では予後不良である。

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