私の経験
パラコート含有除草剤による角膜化学外傷の1例
中尾 啓隆
1,2
,
横川 英明
1
,
田川 考作
3
,
小林 顕
1
1金沢大学眼科学教室
2市立砺波総合病院眼科(富山県)
3小矢部たがわ眼科(富山県)
キーワード:
パラコート
,
角膜化学外傷
,
レバミピド点眼
,
paraquat
,
corneal chemical injury
,
rebamipide eyedrops
Keyword:
パラコート
,
角膜化学外傷
,
レバミピド点眼
,
paraquat
,
corneal chemical injury
,
rebamipide eyedrops
pp.369-373
発行日 2025年4月5日
Published Date 2025/4/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000004121
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パラコート含有除草剤による角膜化学外傷の1症例について報告する。症例は71歳,女性。希釈前の除草剤のボトルを地面に落とした際,内容液が跳ねて左眼に入った。すぐに水道水で洗浄し,同日近医眼科を受診した。はじめ軽度の点状表層角膜症がみられるのみであったが,徐々に増悪したため受傷後8日に金沢大学附属病院眼科紹介となった。左眼の視力は手動弁で,多量の偽膜様物質,結膜充血がみられた。偽膜様物質を除去したところ全角膜上皮欠損であった。酸,アルカリ,パラコートなどによる眼外傷の可能性を考慮し,抗菌薬・ステロイド軟膏に加え,2%レバミピド点眼,アスコルビン酸内服による治療を行った。受傷後9日にパラコート含有除草剤(プリグロックスⓇL)であったと判明した。受傷後11日に角膜の一部に上皮化がみられはじめ,受傷後16日には完全に上皮化した。受傷後23日には左視力(0.3)に改善した。パラコートの毒性には細胞内での酸化ストレスが大きく関わっており,受傷から1週間程度かけて所見の増悪がみられ,20~40日程度で角膜上皮化が得られるといった特徴的な経過をたどる。経過や予後を予測するためには,初診時に可及的速やかな曝露薬剤の特定を進めることが重要である。

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