私の経験
免疫抑制剤内服中に猫ひっかき病に伴う視神経網膜炎を認めた小児の1例
吉田 太理
1
,
髙田 幸尚
1
,
住岡 孝吉
1
,
雑賀 司珠也
1
1和歌山県立医科大学眼科学教室
キーワード:
小児
,
猫ひっかき病
,
視神経網膜炎
,
免疫抑制剤
,
ステロイドパルス療法
,
抗菌薬
Keyword:
小児
,
猫ひっかき病
,
視神経網膜炎
,
免疫抑制剤
,
ステロイドパルス療法
,
抗菌薬
pp.799-805
発行日 2024年8月5日
Published Date 2024/8/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003732
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免疫抑制剤内服中に発症した小児猫ひっかき病の1例を経験したので報告する。症例は9歳,男児。右眼の視力低下を自覚し,201X年11月近医受診のうえ,和歌山県立医科大学附属病院眼科を紹介受診した。右眼の視神経乳頭腫脹,中心窩下から視神経乳頭にかけての漿液性網膜剥離,黄斑部星芒状白斑を認めた。前眼部から中間透光体に異常所見はみられなかった。視力は右眼0.04(0.05×S+0.50D),左眼1.5(1.5×S+0.50D)。限界フリッカ値は右眼15.5Hz,左眼40.5Hz。動的視野検査で右眼の中心暗点がみられ,患者から右眼視力低下を自覚する5日前に飼い猫に引っかかれたことを聴取した。小児科において鼠径部リンパ節腫脹,血液検査での炎症所見,血清抗バルトネラ抗体陽性から,猫ひっかき病と診断された。また,難治性の尋常性乾癬に対してシクロスポリン内服中であった。初診日に入院とし,翌日よりステロイドパルス療法(20mg/kg/日×3日)とミノサイクリン塩酸塩内服(50mg/日×12日)で治療を開始した。入院から1か月で中心暗点は消失,入院3か月後には視神経乳頭腫脹,漿液性網膜剥離,星芒状白斑は消失し,右眼矯正視力は0.5と改善傾向を認めた。その後,治療開始から12か月後0.8,18か月後1.0と視力は徐々に改善していった。免疫抑制剤内服中に猫ひっかき病に伴った視神経網膜炎を発症し,視力改善に1年以上を要した。本疾患は予後良好とされるが,本症例のようなケースも踏まえ,早期からの適切な治療と今後のさらなる症例の蓄積が必要と考えられた。
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