マルチモーダルイメージングによる眼科疾患の診断と病態解明
6.強膜脈絡膜石灰化症のマルチモーダルイメージング
三田村 瑞穂
1
,
加瀬 諭
1
,
石田 晋
1
1北海道大学大学院医学研究院眼科学教室
pp.565-570
発行日 2023年6月5日
Published Date 2023/6/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003159
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強膜脈絡膜石灰化症(sclerochoroidal calcification:SCC)は特異的な自覚症状は乏しいものの,高齢者の眼科定期検査において,眼底異常として偶然発見されることがあるまれな疾患である1)。特発性もしくは,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)などを背景とした二次性副甲状腺機能亢進症などのカルシウム代謝に影響を与える疾患と関連することがあり,Shieldsらは,SCCの原因として副甲状腺機能亢進症(27%),副甲状腺腺腫(15%),Gitelman症候群(11%),Bartter症候群(2%)の順で多いと報告している2)。Gitelman症候群,Bartter症候群は,常染色体劣性の先天性尿細管機能障害による低カリウム血症,代謝性アルカローシス,高レニン・高アルドステロン血症を特徴とし,腎性高カルシウム尿症,腎の石灰化などを認めることが多い。SCCは,眼底中間周辺部や後極部,耳側アーケード血管周囲などに黄白色の不規則な網膜下病変として存在し,滲出性変化を伴わないことが多い3)。興味深いことに,強膜「脈絡膜」石灰化症と命名されているにもかかわらず,カルシウム沈着は強膜に限局しており,脈絡膜には沈着していないことがenhanced depth imaging optical coherence tomography(EDI-OCT)により示されている4)。しかし,SCCにおける網脈絡膜の循環変化については十分に解析されていない。今回我々は,CKDを背景にしたSCCの1例を紹介し,マルチモーダルイメージングによるSCCの病態に関する文献的考察を行う。
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