私の経験
遮光眼鏡で自覚症状が緩和したvisual snow syndromeの1例
吉田 太理
1
,
髙田 幸尚
1
,
西 晃佑
2
,
石川 伸之
1
,
岩西 宏樹
1
,
住岡 孝吉
1
,
雑賀 司珠也
1
1和歌山県立医科大学眼科学教室
2和歌山県立医科大学附属病院紀北分院眼科
キーワード:
visual snow syndrome
,
雪視症
,
砂嵐
,
羞明
,
遮光眼鏡
,
shaded glasses
,
photophobia
Keyword:
visual snow syndrome
,
雪視症
,
砂嵐
,
羞明
,
遮光眼鏡
,
shaded glasses
,
photophobia
pp.1113-1119
発行日 2022年11月5日
Published Date 2022/11/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002863
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Visual snow syndrome(VSS)は患者の自覚症状が疾患名となった,治療方法が確立されていない疾患である。今回われわれは,羞明を合併し学業を継続することが困難となっていたが,遮光眼鏡により自覚症状が緩和したVSSの1例を経験したので報告する。
症例は17歳女性。小学校就学時より羞明と砂嵐のようなものが視界を邪魔することを自覚していた。高校就学後から自覚症状が悪化したため,他院小児科受診後,VSS疑いで和歌山県立医科大学眼科を紹介受診となった。当科初診時,遠見視力は右眼0.5(1.5),左眼0.2(1.5),近見視力は右眼1.0(矯正不能),左眼1.0(矯正不能)であった。対光反射,眼圧,中心フリッカ値,コントラスト感度,動的視野,光干渉断層計,網膜電図,頭部MRIで異常は認めず,器質的疾患を認めなかったこと,反復視も継続的にみられていたことからVSSと診断した。本症例では羞明により学業に支障をきたしていたため,学校側に教科書を背景白で黒字から背景黒や紺で白字に変更してもらい,遮光眼鏡を作成することで羞明に伴う日常生活への影響が改善した。
VSSは医師の認知が進んでいないことから心因性視力障害と混同されることが多い。患者は視覚的苦痛により日常生活に影響を受けているにもかかわらず,まわりの理解も得られないため精神的な苦痛を伴うこともある。VSSを確実に診断し,患者や家族に病状を詳細に説明することで,患者の精神的な苦痛が軽減することもある。また,確立された治療法はないが,適切な対処法を講じることでVSS患者の生活の質を改善できる可能性がある。
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