特集 震災時における循環器医療を改めて考える
識る 日本の災害史と将来の巨大地震
河田 惠昭
1
1関西大学社会安全研究センター
キーワード:
災害対策
,
死亡
,
創傷と損傷
,
歴史
,
地震
,
津波
Keyword:
Death
,
Disaster Planning
,
History
,
Wounds and Injuries
,
Earthquakes
,
Tsunamis
pp.1143-1147
発行日 2017年12月9日
Published Date 2017/12/9
DOI https://doi.org/10.18885/J03097.2018060335
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わが国は、災害大国と考えられている。しかし、このことは、過去に起こった災害の実態が正確に理解されていることを必ずしも意味しない。著者は長年にわたって、巨大歴史災害を復元する努力を継続してきた。その結果、世界の国々のなかで、わが国だけが、被害の実態を含めて、6世紀以降の巨大災害の歴史が包括的にわかるようになった。2018年は明治維新150年であるが、これまでに自然災害で犠牲になった人は、およそ27万4,000人である。近代に入って、毎年1,800人余が犠牲になったことになる。このような大きな数字が、しかも定量的に評価できるのは、先進国を入れてわが国だけである。なぜ災害史の研究が必要かといえば、災害は繰り返し起こるからである。しかも、大きな災害ほどその発生間隔は長いといってよい。昔起こったことは、将来必ず起こる。しかし、被害の内容はまったくといってよいくらい変わる。だから、何が起こったかを復元するだけでは駄目で、何が起こるかを予測しなければならない。災害は進化するのである。将来、首都直下地震や南海トラフ巨大地震、東京水没という国難災害が起これば、それがきっかけでわが国は衰退する。災害研究を進めれば進めるほどに、その結論は間違っていないと確信できる。だから、政府は防災省を創設し、国難災害を迎撃しなければならない。これが著者の主張である。しかし、国難災害がもたらす悲惨さは、国政を担う政治家はもとより、国民にも殆ど理解されていない。災害緊急事態条項や憲法改正などとは無縁で、それらを考えることすら拒否されている。
(刊行時の通巻頁数に誤りがありました。本文は修正後の通巻頁数が表示されています。)
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