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末梢動脈疾患(peripheral arterial disease;PAD)の最も一般的な原因は、閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans;ASO)であり、最近の報告では、全世界で無症候性から重症を含め2億人以上が罹患していると見積もられている。その他の原因疾患としては、Buerger病を含めた血管炎も知られており、これらも重症の四肢虚血に至ることがある。慢性重症下肢虚血(critical limb ischemia;CLI)とは下肢虚血の終末像であり、臨床的には安静時痛または潰瘍・壊死を呈する病態である。欧米では1年間に人口100万人あたり500~1,000例でCLIが発症し、CLIによる下肢大切断術が年間250,000件と推定されており、社会経済的に大きな問題であると同時に、患者の生活の質(quality of life;QOL)の高度低下をきたす。CLI患者の予後は不良であり、発症後1年の死亡率および大切断施行率は、それぞれ25%、30%と報告されている。現時点における救肢のために最も有効な治療手段は、外科的バイパス手術または血管内治療による血行再建術であると考えられている。しかしながら、25~50%のCLI患者では、自家静脈グラフトの欠如、脛骨動脈領域の広範な血管病変、全身状態不良などのため、従来の血行再建術の適応にならない。したがって、いわゆるno-option CLI患者に対する新たな血行再建治療法の確立は、医学的・社会的な急務である。CLIに対する下肢血行改善治療開発のため、これまでにさまざまな分子生物学的、薬理学的なアプローチが試みられてきたが、最近注目されているのは細胞移植による血管再生療法である。本稿では、CLIに対し、これまで行われてきた血管再生治療の成績と問題点、展望などについて細胞治療を中心に概説する。
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