特集 新規糖尿病薬は心血管イベントの抑制にどうかかわるか
治す EMPA-REG OUTCOME試験の解釈と循環器疾患への応用
田中 敦史
1
,
野出 孝一
1佐賀大学 医学部循環器内科
キーワード:
Glycated Hemoglobin A
,
糸球体濾過量
,
心臓血管疾患
,
心不全
,
糖尿病-2型
,
発生率
,
ランダム化比較試験
,
リスク評価
,
二次予防
,
血行力学
,
Empagliflozin
,
SGLT2 Inhibitors
Keyword:
Sodium-Glucose Transporter 2 Inhibitors
,
Cardiovascular Diseases
,
Diabetes Mellitus, Type 2
,
Glomerular Filtration Rate
,
Hemodynamics
,
Glycated Hemoglobin A
,
Heart Failure
,
Incidence
,
Randomized Controlled Trials as Topic
,
Risk Assessment
,
Secondary Prevention
,
Empagliflozin
pp.867-874
発行日 2017年8月9日
Published Date 2017/8/9
DOI https://doi.org/10.18885/J03097.2017390475
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EMPA-REG OUTCOME試験は,SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンを用いて,心血管疾患のハイリスク糖尿病患者を対象に実施された心血管アウトカム試験である。心血管死・総死亡などのハードエンドポイントと同時に,心不全入院などのリスクも大幅に減少させることが明らかとなり,従来の糖尿病治療薬では認められなかった心血管保護効果に大きな注目が集まっている。その結果,循環器疾患の発症抑制を目的とした糖尿病治療戦略に大きなインパクトがもたらされ,糖尿病治療薬でありながら循環器疾患に対しても多彩な薬理作用に基づく治療効果が強く期待されている。しかし,SGLT 2阻害薬が心血管系に及ぼす詳細な作用機序はいまだ研究途上であり,さらなるエビデンスの蓄積が期待されている。さらに,SGLT2阻害薬には,脱水の誘発や尿路・性器感染症などといった特徴的な副作用が知られており,わが国における普及率はいまだ低いのが現状である。しかし,適切な使用によりSGLT2阻害薬がわれわれ循環器科医にとって目の前の循環器疾患を合併した糖尿病患者に対する大きな治療手段の1つになる可能性を十分秘めている。以上の観点から本稿では,EMPA-REG OUTCOME試験の概要と,その臨床的解釈および循環器疾患に対するSGLT2阻害薬の今後の可能性などについて概説したい。
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