特集 成人先天性心疾患 正確な患者評価から適切な治療へ
治す 成人先天性心疾患における心不全の薬物治療
相馬 桂
1
,
八尾 厚史
1東京大学 医学部循環器内科
キーワード:
Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitors
,
Adrenergic Beta-Antagonists
,
血管拡張剤
,
心臓疾患-先天性
,
心不全
,
肺高血圧症
,
Angiotensin II Type 1 Receptor Blockers
Keyword:
Adrenergic beta-Antagonists
,
Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitors
,
Hypertension, Pulmonary
,
Heart Defects, Congenital
,
Heart Failure
,
Vasodilator Agents
,
Angiotensin II Type 1 Receptor Blockers
pp.520-526
発行日 2017年5月9日
Published Date 2017/5/9
DOI https://doi.org/10.18885/J03097.2017220954
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先天性心疾患の頻度は出生児の約1%であり,その診断および手術技術の進歩により,昨今では先天性心疾患患者の90%以上が成人期を迎えられるようになった。患者数の増加と高齢化とともに,成人先天性心疾患(adult congenitalheart disease;ACHD)における心不全管理が重要となってきている。ACHD患者の心不全の原因には,遺伝的な要素と後天的な要素(圧容量負荷・外科的侵襲・心筋障害)に加え,心血管構造異常に由来するもの(体心室右室,単心室症,シャントなど)がある。このようにさまざまな原因が関与するために,ACHDに伴う心不全は後天性心疾患に伴う心不全と比較して,より複雑な病態を呈する。また,体心室のみならず本来の肺心室としての右室機能が予後に重要な影響を及ぼすことが多いという特徴がある。薬物治療における最も重要な問題点は,ACHDに合併する慢性心不全に対する薬物療法が確立していないことである。アンジオテンシン変換酵素(angiotensinconverting enzyme;ACE)阻害薬,アンジオテンシンII受容体遮断薬(angiotensin II receptor blocker;ARB),β遮断薬は成人慢性心不全治療薬の第一選択薬だが,これらの薬剤がACHD合併心不全に対して同等の効果があるか否かに関しては,いまだに十分なデータがない。現時点では個々の症例ごとに慎重に判断し薬剤を選択していくしかないのが実情であるが,本稿がACHDに合併する心不全の薬物治療のヒントになれば幸いである。
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