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はじめに
関節軟骨は組織修復能に乏しいため,大きな軟 骨損傷が起こった場合,その欠損部は修復されず に,変形性関節症へと移行していく。本病態への 進行を抑制するために,手術療法として骨髄刺激 法(marrow stimulation technique)および自家骨 軟骨柱移植術(mosaicplasty)などの処置が試みら れるが,これらの治療法にはいずれも適応限界が ある。また,骨髄刺激法によって再生される組織 は,硝子軟骨とは力学的特性の異なる線維軟骨で あることが多く,自家骨軟骨柱移植術においては 移植片採取による手術侵襲の問題がある。 自家培養軟骨細胞移植術(autologous chondrocyte implantation;ACI)は,2017年現在,わが国におい て保険収載が認められた唯一の軟骨再生医療であ り,その良好な臨床成績が報告されている1)。し かし一方で,施術可能な施設が限定されること, 細胞採取のため二期的手術が必要であること,骨 膜による移植軟骨の固定が必要であることなどの 問題点が指摘されている。海外においては,これ らの問題点を克服した新たな治療法として,自家 基質誘発軟骨形成(autologous matrix-induced chondrogenesis;AMIC)に代表されるような一期 的無細胞軟骨修復治療が試みられており,その臨 床成績が徐々に明らかになりつつある。 一方,筆者らは抽出・精製過程においてエンド トキシン含量を低減する処理を施した高純度低エ ンドトキシンアルギン酸(ultra-purified alginate; UPAL)ゲルを開発し,無細胞軟骨修復治療法の 開発を目指している(図1)。本稿では,近年にお ける無細胞軟骨修復治療の概要と,これまで筆者 らが行ってきた軟骨再生用医療材料としてアルギ ン酸を応用する近年の試みを紹介する。
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