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はじめに
保存療法で改善しない凍結肩に対して,近年 Waltherら1)は早期に鏡視下肩関節授動術を施行する とより良好な成績が得られ,日常生活動作(activities of daily living;ADL)の早期改善が望ましいと報告 している。凍結肩はその多くに腱板不全断裂を合併 し,炎症性サイトカインや肩峰下インピンジメント による烏口上腕靱帯(coracohumeral ligament; CHL)の機械的刺激により,関節包の線維化が徐々 に進行して発生する2)。 Mengiardiら3)は,MRIにてCHLが4mm以上の肥 厚,関節包7mm以上の肥厚は凍結肩の所見であり, CHLは幅広く腱板疎部を肥厚させていると報告し ている。解剖学的には,CHLは2パートに分かれ ていて1つは上腕骨大結節まで,もう1つは肩甲下 筋腱上方〜棘上・棘下筋腱まで伸びている4)。下 方線維に関しては必ずしも拘縮の原因であるとの エビデンスはない。従って,上腕骨頭の肩甲骨関 節窩に対する最低限の安定性を確保するために, 一部後下方関節包を温存する(図1)。 凍結肩の肩甲上腕関節(glenohumeral joint; GH)内を鏡視すると,その特徴として,下垂位外 旋にて上腕二頭筋長頭腱(long head of biceps tendon;LHB)の骨頭を滑るように動く動作が消 失していることが明らかとなり,この動作をLHB のdynamic movementとよび,これを制限してい るLHB周囲のCHLの癒着が凍結肩の病態に関与し ていることを筆者ら5)は報告した。 このLHB周囲の癒着の程度が,LHBと棘上筋腱 の間に前方から鈍棒が入りやすい(type A)・入り にくい(type B)・まったく入らない(type C)と分 けて鏡視下分類し,早期凍結肩はtype Aが最も多 く,長期化,重症化するとtype Cとなることを認 めた5)。従って,治療としてはLHBの周囲を中心に 右肩であれば,①前方,②前下方,③上方,④上 後方の4パートを切離するのみで凍結肩の病態改善 は得られるとした背景がある6)。 本稿では,合併症を最小限に抑え,効果を十分 に発揮する鏡視下肩関節授動術を紹介する。
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