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はじめに
三角線維軟骨複合体(triangular fibrocartilage complex;TFCC)の尺骨小窩付着部は,遠位橈尺 関節(distal radioulnar joint;DRUJ)の安定性に 重要な役割をもっている。従来,TFCC尺骨付着 断裂に対してはTFCCを茎状突起や尺側関節包に 縫合する報告が多かったが,近年,小窩付着部の 重要性が認識されるようになってから小窩部縫合 術が行われるようになってきた。 TFCC小窩部縫合術には鏡視下縫合術と直視下 縫合術があるが,いずれも良好な臨床成績が報告 されており,鏡視下縫合術と直視下縫合術を比較 研究した報告では臨床成績には有意な差がないと の報告がある1)。しかし筆者の経験では,鏡視下 縫合術は侵襲が少ないが技術的に難しく,瘢痕切 除が不十分となり陳旧例や不安定性の強い症例に は限界がある。直視下縫合術は鏡視下法に比べ侵 襲的であるが,小窩部の視野がよいため掻爬・縫 合処置が容易であり,より強固な修復が可能であ る。 TFCC小窩部断裂は小窩の掌側部に圧痛がある ことが多く,これをfovea sign(図1a)とよぶ2)。 一般的に圧痛点が靱帯損傷部位を示すことがよく 経験されることから,TFCC小窩部断裂は掌側に 優位に損傷があると推測される。また,臨床的に DRUJ不安定性のほとんどは尺骨背側不安定型で あり,尺骨の背側移動を制動する掌側橈尺靱帯の 修復が特に重要である(3) 図2)。 これらのことから,筆者はfovea sign陽性で尺 骨背側不安定型のTFCC小窩部断裂に対し,2003 年より掌側進入法を導入してきた4)〜7)。本稿では, これらの掌側進入直視下TFCC修復術および再建 術の手技を述べ,その意義および利点を明らかに する。
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