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はじめに
四肢関節内骨折の治療は,ロッキングプレート の出現により急速に進歩した。解剖学的整復を目 指す強力なツールとして普及し,関節固定術や人 工関節置換術の回避が高率となってきた。脊椎骨 折の治療も,椎弓根スクリューの出現により格段 の進歩がみられたが,四肢関節内骨折との大きな 違いは,いまだに関節固定術が行われていること である。もし解剖学的整復が得られるのであれば, 関節可動性の再獲得は夢ではない。 一方,脊髄損傷の除圧は,欧米では24時間以内 の急性期手術に傾きつつある。骨折や脱臼を伴う 場合は,受傷後24時間以内に除圧するほうが24時 間以降に除圧するよりも,神経学的予後がよいと の報告があり1),2),さらには8時間以内の除圧であ れば,受傷時完全麻痺でも不全麻痺に改善する可 能性が高いとの報告が散見されるようになってき た3),4)。しかしこのような急性期の手術では,全身 状態が悪い場合もあり,出血や感染などのリスク が高いため,骨移植を行わないほうが妥当と考え られ, 二期的に骨移植を行うspine damage controlの概念も提唱されるようになってきた5)。 一方,骨移植を行わず後方固定のみ行った場合は, 長期間の経過でスクリュー周囲の緩みや,インプ ラント折損が生じる危険性がある。 はたして骨移植を追加し,関節固定を行うこと は必須であろうか?脊椎骨折に対し,急性期手 術で骨移植を行わない一時的後方固定により解剖 学的整復を獲得し,骨折の癒合時期に抜釘を行え ば,抜釘後もよいアラインメントを保つ可能性が ある。この問題に関して,軸椎歯突起骨折と腰椎 破裂骨折に関して言及している論文はあるが,他 の脊椎骨折では一時的後方固定による予後に言及 している報告がない6),7)。 本稿では,軸椎歯突起骨折,腰椎破裂骨折のほ かに,軸椎ハングマン骨折,中下位頚椎破裂骨折 に対する,骨移植を行わない一時的後方固定の臨 床経過を報告する。
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