連載 災害時の循環器疾患管理:経験とエビデンスに基づく提言
第1回
新潟大震災の経験と提言
榛沢 和彦
1
1新潟大学大学院医歯学総合研究科先進血管病・塞栓症治療・予防講座
pp.95-104
発行日 2021年1月9日
Published Date 2021/1/9
DOI https://doi.org/10.18885/HV.0000000465
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エビデンスに基づく提言
1 震災後の車中泊避難は肺血栓塞栓症(pulmonary embolism:PE)を惹起する。車中泊による肺血栓塞栓症は2〜7日後に多く発生し,40歳代,50歳代の中年女性で突然死を含む重症の肺血栓塞栓症が多い。
2 車中泊は1泊でも肺血栓塞栓症の危険性があるが,長く車中泊するほど深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:DVT)が多くなる。またセダン型と軽自動車ではワゴン車よりもDVTが多く,後方座席でも肺塞栓症死亡の危険がある。
3 震源地に近い地域でDVTが多い。
4 震災4〜5カ月後に被災者の活動性が低下して再度DVTが増え,その後遷延し10年以上残存することも少なくない。
5 飲水指導,運動指導をしても避難所でのDVTはなくならず,200人以上の混み合った避難所でDVTが多い。
6 震災後に慢性化したDVTは,脳梗塞・心筋梗塞などと関連がある可能性がある。
7 震災後にたこつぼ型心筋症が増えるので,心不全の増加に注意が必要である。
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