特集 見逃していませんかその症状,疾患!-日常診療で見逃さないためのTips-
3.心筋症/心不全
5.数年の経過で心機能障害が悪化した高齢男性
緒方 詔子
1
,
戸次 宗久
1
,
杦山 陽一
1
,
本多 亮博
1
,
福本 義弘
1
,
田原 宣広
2
1久留米大学医学部 内科学講座 心臓・血管内科部門
2久留米大学医学部 内科学講座 心臓・血管内科部門/久留米大学病院 循環器病センター
キーワード:
心アミロイドーシス
,
トランスサイレチン
,
99m 標識テクネシウムシンチグラフィ
,
手根管症候群
,
タファミジス/パチシラン
Keyword:
心アミロイドーシス
,
トランスサイレチン
,
99m 標識テクネシウムシンチグラフィ
,
手根管症候群
,
タファミジス/パチシラン
pp.111-118
発行日 2020年11月1日
Published Date 2020/11/1
DOI https://doi.org/10.18885/HV.0000000367
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症例は70 歳代,男性。両側手根管症候群に対して手術歴がある。近医にて腰部脊柱管狭窄症と診断され,手術適応と判断された。術前の心精査目的に近医総合病院を受診した際,労作時息切れの症状があり,精査・加療目的に当科へ紹介され,入院となった。心電図では,洞調律で心拍数59 回/分,右軸偏位,Ⅱ , Ⅲ , aVF, V6 誘導にてストレイン型ST 低下を示し,明らかな低電位や左室高電位は認めなかった。心エコーでは,びまん性左室肥大を認め,心室中隔のエコー輝度は上昇し,左室駆出率が55.5%であった。また,パルスドプラ法を用いた心室流入血流速波形による拡張能の評価では,拡張早期波(E 波)と心房収縮波(A 波)の流速比(E/A)は2.77,E 波の減速時間は214msec であり,組織ドプラ法を用いた拡張早期僧帽弁輪部移動速度波(E’)から算出したE/E' は23.4 と拡張能の低下を認めた。心臓magnetic resonance imaging(MRI)では,両心室の内膜側や中層に遅延造影効果を認め),99m 標識テクネシウムシンチグラフィでは,Perugini grade3 の心臓集積を認めた。心内膜心筋生検と遺伝子検査を行い,全身性野生型トランスサイレチンアミロイドーシスの診断となった。慢性心不全や心室頻拍に対して,利尿薬,アンジオテンシンⅡ受容体阻害薬,少量のβ遮断薬が使用されたが,数年の経過でⅠ度房室ブロックや右脚ブロックが出現,心房細動を呈し,心収縮能が悪化した。
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