- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
80 歳代,女性。高血圧症の既往あり。8 時間前発症の胸痛で当院へ救急搬送された。血圧80/47mmHg,脈拍 87bpm,呼吸回数 20 回/ 分,SpO2 97%(O2 経鼻ネーザル 3L 投与)で末梢の冷感を認めた。心雑音は聴取せず,両肺でcoarse crackles を聴取した。12 誘導心電図のV2-5でST 上昇とQ 波,経胸壁心エコー図検査で前壁中隔- 側壁に壁運動低下を認めた。Killip Ⅳの急性前壁心筋梗塞と診断し,緊急で冠動脈造影検査を施行した。左前下行枝 seg.7 proximal 100%の所見を認め,primary PCI を施行し,TIMI2 のfl ow で手技を終了した。手技中に血圧低下があり,IABP を挿入しノルアドレナリンdiv を開始した。ICU 入室後,NPPV を開始しフロセミド40mg/ 日div で心不全加療を開始した。経過良好であったため,第3 病日にノルアドレナリンを終了,IABP とNPPV から離脱した。その後心不全は改善傾向であったが,第6 病日より尿量が減少し始め,第7病日の胸部X 線で再度高度な肺水腫を認めた。心エコー図検査でも右心拡大と肺高血圧の所見が認められた。この時点では明らかな心筋梗塞の機械的合併症は検出できなかった。ドブタミン,ミルリノンのdiv を開始し,トルバプタンの内服も開始したが,その後も心不全は増悪した。第10病日の心エコー図検査で心室中隔心尖部よりに5mm 大の穿孔を認めた。救命のためには機械的補助循環,手術が必要であったが,本人・ご家族ともに侵襲的な治療を希望されず看取りの方針となった。振り返ってみると,第7 病日の心エコー図検査でも心尖部付近で左室→右室へ向かうモザイク血流が認められており,心室中隔穿孔を見逃していたことが判明した。
Copyright © 2020, MEDICAL VIEW CO., LTD. All rights reserved.