【Expertise】左心疾患に関連した肺高血圧症の診断

左心系心疾患（LHD）による肺高血圧症（PH-LHD）は，肺高血圧症（PH）において約50％と最も頻度が高いことが知られている。PH の機序としては左心系心疾患に起因する上昇した左房圧の圧伝搬によるが，慢性的な圧上昇に伴い肺動脈性肺高血圧症（PAH）に認められるような肺血管の組織的変化が加わり，さらなる肺動脈圧の上昇をきたす。しかし，PH-LHD に対する肺血管拡張薬の有効性が臨床試験において示されておらず，PAHへの誤分類は，多剤併用が主流であるPAH 治療において，間違った治療戦略につながる可能性があるため，PH-LHD とPAH の正確な鑑別診断が求められている。本稿においては，診断を中心にニースにおける第6回国際会議でも話題になった点について触れながら議論を進めたい。