特集 臨床MRIを基礎から知る−さまざまな角度からMRIの魅力に迫る−
[頭部領域]
脳腫瘍に対するMRSの活用
谷藤 穂波
1
,
小林 正周
1
,
堀 正明
1
1東邦大学医療センター大森病院 放射線科
キーワード:
MRS(MR spectroscopy)
,
脳腫瘍(brain tumors)
,
放射性壊死(radiation necrosis)
Keyword:
MRS(MR spectroscopy)
,
脳腫瘍(brain tumors)
,
放射性壊死(radiation necrosis)
pp.33-38
発行日 2023年4月30日
Published Date 2023/4/30
DOI https://doi.org/10.18885/CI.0000001253
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▶ MR spectroscopy(MRS)は分子構造の違いによる原子核の周波数差を解析することで,任意の部位における微量の代謝物質を測定することのできる手法である。
▶ 一般的な測定代謝物としては,N–アセチルアスパラギン酸(NAA),クレアチン(Cr),コリン(Cho),乳酸(Lac),脂質(Lip),ミオイノシトール(mIns),グルタミン+グルタミン酸などがある。
▶ Crはすべての細胞に存在し,エネルギー代謝に関連しており,またほかの物質の信号と比較し変動が少なく安定しているため,ほかの物質の相対的評価における基準になる。
▶ Choは細胞膜リン脂質の前駆物質と考えられ,細胞増殖など膜代謝を表す。
▶ NAAの低下は神経細胞の障害や減少を示し,Lacは嫌気性代謝が亢進した際に認められ,正常脳組織では検出されない物質である。
▶ これらの物質を測定することにより,中枢神経領域では脳腫瘍の鑑別(神経膠腫,中枢神経原発性リンパ腫,転移性脳腫瘍)や神経膠腫の悪性度の判定などに応用されている。
▶ 正常脳実質に対してROIを置いたMRSをFig.1に示す。
▶ 正常脳実質ではHunter’s angleとよばれる右肩上がりのスペクトラムを示す。これに対し,神経膠腫におけるMRSでのスペクトルの特徴としては,Cho上昇,NAA低下,mIns上昇が挙げられる。
▶ これに加えて,膠芽腫(glioblastoma)では壊死を反映して,乳酸/脂質(Lac/Lip)上昇を認めることがある。膠芽腫に対するMRSをFig.2に示す。
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