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【要 旨】
目 的:関節鏡下肩腱板修復術(ARCR)後の再断裂は,特に高齢者において重大な問題である.本研究では,術前の栄養状態がARCR後の再断裂率に影響を与えるか否かを検証することを目的とした.
対象および方法:本研究は単施設の後ろ向き研究であり,65歳以上で腱板断裂に対してARCRを施行され,術後2年以上の経過観察が可能であった患者を対象とした.術前の栄養状態は,Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)を用いて評価した.患者を治癒群と再断裂群に分類し,術後2年のMRI結果に基づいて再断裂に関連する因子を調査した.解析は,単変量解析に加え,ロジスティック回帰分析を用いて再断裂の独立した危険因子を検討した.また,GNRIのカットオフ値を決定するために,層別尤度比(stratum-specific likelihood ratio:SSLR)分析を行った.
結 果:最終的に143例が組み入れられ,再断裂率は20.3%であった.再断裂群ではアルブミン値,GNRI,術後の肩関節外転および外旋筋力,術後の日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOAスコア),Constantスコアが治癒群と比較して有意に低かった.ロジスティック回帰分析の結果,GNRIに基づく低リスク[リスクなしと比較して,オッズ比(OR)=3.39]および1mmあたりの内側-外側断裂サイズ(OR=1.10)が,ARCR施行2年後の再断裂の独立した危険因子であることが示された.SSLR分析により,GNRI<103,103≦GNRI<109,GNRI≧109の三つの群が同定された.ロジスティック回帰分析では,GNRI<103群と103≦GNRI<109群の比較(OR=3.88),GNRI<103群とGNRI≧109群の比較(OR=5.62),さらに1mmあたりの内側-外側断裂サイズ(OR=1.10)が,ARCR後2年の再断裂の独立した危険因子であった.
結 論:ARCR後の再断裂リスクを評価する際,GNRI≧103は術前の栄養状態が良好であることを示唆する可能性がある.しかし,本所見の臨床的意義を明確にするためには,さらなるデータの蓄積が必要である.

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