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は じ め に
エビデンス構築を目的に大規模運動器疾患レジストリーシステムである日本整形外科学会症例レジストリー(Japanese Orthopaedic Association National Registry:JOANR)が2020年より開始された.JOANRに登録された医療情報を分析することにより医療の質の向上を図り,国民に対する良質な医療の提供が期待されている.
JOANRにはこうした恩恵がある一方で,データ登録という負担がつきまとう.施行した手術ごとに11の必須項目の登録が求められるうえに,人工股関節全置換術(THA)に関しては,さらに10もの詳細項目の記載が必要である.術者は手術ごとの手術記録に加えて,JOANRの登録が必要であることから,これまで以上に大きな負担がかかる.この問題の一つの解決策は,自動的にJOANRの項目を抽出するシステムを構築することである.手術記録は手術内容が詳細に記載されているため,JOANR自動化システムの情報抽出対象として適している.しかし,手術記録はフリーテキストで構成されているため,自動的に情報を抽出するアルゴリズム構築は困難であった.
AIの一種である自然言語処理の技術が,こうしたフリーテキストからの情報抽出を可能にした.整形外科の手術記録を対象にした自然言語処理を用いた先行研究では1~3),古典的な自然言語処理の手法であるルールベースと機械学習が用いられてきた.THAの手術記録を対象にした先行研究4)では,ルールベースを用いて手術アプローチとインプラント固定方法の情報を約90%の正確さで抽出することが可能であった.
そうした中,2018年に自然言語処理の最新モデルであるbidirectional encoder representations from transformers(BERT)5)がGoogleから発表され,過去の自然言語処理モデルよりも優れたパフォーマンスを出した.放射線読影所見を対象にした先行研究6,7)では,BERTが古典的な手法と比較して精度が高いことが示された.
本研究の目的は,THAの手術記録から自動的にJOANRの情報を抽出してくるシステムを構築するうえで,もっとも適した自然言語処理の手法を探索することである.

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