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は じ め に
今日,わが国におけるがん患者は100万人を超え,その約半数には骨転移を認めるとされる.四肢長管骨,脊椎転移による疼痛,病的骨折による疼痛,転移性脊椎腫瘍における脊柱管内進展(malignant epidural spinal cord compression:MSCC)[図1]1)に伴う麻痺などは骨関連事象(skeletal related event:SRE)と称され,患者の日常生活動作(ADL)低下につながる.
SREによる患者のADL低下は,化学療法の中止につながり,直接的に生命予後の短縮に影響を及ぼすだけでなく,介護量の増大により家族や医療従事者に与える影響も大きい.
また,MSCCは重度の麻痺症状が出てから気づかれることも多く,そのような場合は緊急での手術対応となり,執刀医や手術室スタッフへの影響も大きい.さらには麻痺が進行してからの手術は,進行予防にはよいが麻痺の改善の程度には限界があるため,可能な限り麻痺が進行する前に治療を行うことが望ましい.
一般的に,MSCCは神経症状からその病態を疑い,MRIもしくは造影CTを撮影しなければ発見が困難であり,麻痺の出現や病変の増大が起こってから診断されることが多い.しかし,MRIでMSCCが認められた症例を後ろ向きに検討すると,SREにいたる前から単純CTでもMSCCが指摘できた症例が認められた(図2).ただし,単純CTは消化器内科や呼吸器内科など,原発科での原発巣や肺などへの転移の経過観察目的に観察されるため,脊柱管内のMSCCまで読影されない場合が多い.つまり,MSCCが存在しても実際の読影では指摘されていないものが少なからず存在し,中には早期にMSCCを認知し対応していれば,予後をよりよいものにできていた症例もあると思われる(図3).
本稿では,がん患者の原発診療科の診療で単純CTが定期的に撮影されることに着目し,「単純CTから自動的にMSCCをスクリーニングできるAIの開発」をめざして研究を行ったので,まだまだ発展途上ではあるが現時点での結果について述べる.

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