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は じ め に
がんの罹患数は年々増加し続けるとともに,診断精度の向上に加え,分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬など治療法の進歩により,がんサバイバーの数は飛躍的に増加している1).さらに,がん遺伝子パネル検査やがんゲノム医療の発展を背景に,今後もがん患者の予後延長はいっそうすすむことが予想される.
がんの根治が困難であっても,治療を継続しながら “がんと共存する” ことが可能な患者が増加している一方で,日常生活動作(ADL)および生活の質(QOL)に直接的かつ重篤な影響を及ぼすものとして,骨転移の存在がある.近年,がん骨転移に対して整形外科医が積極的に関与する必要性が強調されるようになり,一般整形外科医が骨転移診療に携わる機会も徐々に増加している.また,骨・軟部腫瘍専門医が不在の施設においても,骨転移リエゾン治療の導入や小規模ながら骨転移キャンサーボードの立ち上げが報告されている2).
しかしながら,依然として多くの施設では,骨転移診療は大学病院やがんセンターに所属する骨・軟部腫瘍専門医,あるいは限られた脊椎外科医・外傷外科医によって担われており,施設間格差が大きいのが実情である.また,これまで骨転移診療に整形外科が関与してこなかった施設においては,がん診療科が多職種による包括的マネジメントの必要性を認識していたとしても,過去の経緯から整形外科へのコンサルトが控えられる傾向にあることも否定できない.
本稿では,骨・軟部腫瘍専門医が不在の地域中核病院に,骨転移診療の経験を有する整形外科医が赴任したことにより,院内における骨転移診療体制がどのように変化し,どの程度の臨床的貢献がなされたかを後方視的に検討した.

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