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【要 旨】
目 的:わが国における変形性股関節症(OA)の病因の約8割を占める発育性股関節形成不全(developmental dysplasia of the hip:DDH)は多くの家族内発生を認め,遺伝的素因があると考えられている.血縁者にDDH患者がいるとDDH罹患の危険性が高いと報告されているが,OA発症後の病状進行に対するDDH家族歴の危険性を評価した報告は渉猟する限りない.本研究の目的はDDH家族歴がOA進行に与える危険性について検討することである.
対象および方法:DDHによるOAに対して手術を受けた連続した外来患者298例を対象として,家族歴を含む詳細な臨床情報を聴取した.DDHの重症度[人工股関節全置換術(THA)受療の有無,DDHの両側罹患の有無,股関節痛の発症年齢,DDHの三つの指標角度]と関連する臨床的またはX線学的項目を収集し,DDH家族歴との関連を多変量解析で定量的,定性的に評価した.また,DDHの家族歴がOAの進行に及ぼす影響を評価するため,THAをエンドポイントとした生存時間解析も行った.
結 果:DDHの家族歴は,DDHの両側病変[オッズ比(OR)=2.09,95%信頼区間(CI)1.05~4.16,p=0.037),股関節痛の早期発症(p=0.0065),DDHのX線学的重症度(p=0.016)と有意な関連を示した.DDHの家族歴はTHAの受療と有意な関係を示し(OR=2.25,95% CI 1.09~4.66,p=0.029),Cox回帰分析によっても裏づけられた[ハザード比(HR)=1.56,95%CI 1.15~2.11,p=0.0044].
結 論:DDHの家族歴はOA進行の危険因子である.DDHの遺伝的素因が強いほどOAの発症と進行が速くなる.
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