Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
【要 旨】
目 的:過去の研究で頚椎症性脊髄症(cervical spondylotic myelopathy:CSM)患者の後方除圧術の治療成績に糖尿病が及ぼす影響について検討されているが,一定の見解は得られていない.本研究の目的は,大規模多施設研究のデータベースを用いて糖尿病の合併がCSMの治療成績に与える影響を調べることである.
対象および方法:頚椎後方除圧術を施行したCSM患者675例を対象とした.糖尿病診断基準に基づいて糖尿病群(n=140)と非糖尿病群(n=535)に分け,頚部visual analog scale(VAS)と日本整形外科学会頚髄症治療成績判定基準(JOAスコア)による機能改善を統計学的に比較した.糖尿病患者は全例専門医による血糖コントロールのうえ手術を行った.さらに糖尿病患者を食餌療法または経口薬でコントロール可能な軽症群(n=131)とインスリンを使用する中等症群(n=9)に分けて治療成績を比較した.
結 果:糖尿病群は非糖尿病群に比べ術前JOAスコア(10.5±2.5 vs. 11.1±2.7,p=0.025)および術後JOAスコア(13.5±2.0 vs. 14.1±2.2,p=0.001)が低く,JOAスコア改善率も低かった(43.4±36.8% vs. 51.2±30.0%,p=0.009).しかしながら,JOAスコアの術前後差は両群で有意差はなかった(3.0±2.2 vs. 3.0±2.1,p=0.988).この結果は,術前JOAスコアが低いとJOAスコア改善率も低くなるというJOAスコア改善率の科学的限界を示していた.術前頚部VAS(3.4±2.9 vs. 3.4±2.8,p=0.976)および術後頚部VAS(2.0±2.4 vs. 2.0±2.3,p=0.913)と頚部VASの術前後差(−1.4±2.5 vs. −1.4±2.7,p=0.688)は両群で有意差はなかった.検定力不足で統計学的解析は行えなかったが,軽症群と中等症群でJOAスコア改善率(43.3±37.1% vs. 45.3±33.9%)とJOAスコアの術前後差(3.0±2.2 vs. 2.7±2.5)はほぼ同等であった.
結 論:糖尿病の合併はCSMに対する後方除圧術の神経学的機能改善と頚部痛の改善に影響を与えないことがわかった.
© Nankodo Co., Ltd., 2023