誌説
症例報告に始まり,症例報告に終わる
朴木 寛弥
1
1奈良県立医科大学骨軟部腫瘍制御・機能再建医学教授
pp.748-748
発行日 2023年6月1日
Published Date 2023/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei74_748
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昨今の論文の価値は,ランダム化比較試験(RCT)のような大規模臨床試験やそれを集めたメタ解析といった解析対象が多いものに重きがおかれる.当然,数が多いほど確からしさ,いわゆる「エビデンス」らしさも増すので,そこからevidence-based medicine(EBM)なるものが形作られ,ガイドラインの基準となり,標準的治療の確立に結びついてきた.それは,患者の利益という意味できわめて重要であることは論をまたない.一方で,そういった大規模臨床試験ではなく,さまざまなデータベースを用いた個々の症例のリアルワールド・データも耳目を集めている.臨床現場においては,良きにつけ悪しきにつけ当然EBMの基準からはずれた結果となる症例も数多く存在するわけで,将来的にはこちらのデータから得られたエビデンスがRCTを凌駕する日が訪れるのかもしれない.
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