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はじめに
筆者が投稿し初めて掲載された英文論文は症例報告である1).医師になって5年目に勤務していた小児病院で神経線維腫症Ⅰ型(フォン・レックリングハウゼン病)に股関節脱臼を合併した女児を経験し,指導医から同様の症例が過去にもう1名いたので併せて症例報告するように命じられ,国内の研究会で発表した.その後数か月かけて英文論文にして投稿した.電子投稿などない時代で,初期のパソコンで作った原稿をプリントアウトし,紙焼きした写真とともに航空便で郵送していた.論文の執筆のみならず,編集者とのやり取りなど初めての経験で,とても勉強になった.
症例報告は原著論文に比較して低い評価しか受けない傾向があり,根拠に基づいた医療(evidence-based medicine;EBM)の世界ではエビデンスレベルが低いのは事実である.多くの医学雑誌が症例報告の掲載を敬遠する傾向にあるが,これは症例報告の引用回数が少ないため,症例報告を多く掲載すると雑誌のインパクトファクターが低下する,という戦略的な理由にもよる2).しかし適切に報告された症例は医学的価値が高い.例えば1981年にAmerican Journal of DermatopathologyとLancetに別々に報告された,同性愛男性に生じたKaposi肉腫に関するケースシリーズは,エイズの最初の報告であるとされている3,4).
症例報告を促すことは,若手医師の教育面で重要な役割を果たす.臨床に基づいた学習を経験し,他の患者にも応用することで医学的知識を広げ,専門職としての成長につながる2).リハビリテーション関係の雑誌編集者のなかには,症例報告を若手医師の教育に用いることに疑念を抱くものもいるが5),筆者自身としては,若いリハビリテーション医やリハビリテーション専門職は,以下に記述することを参考にして,報告に値する症例の報告,それもできれば英文での投稿に挑戦して欲しいと考えている.
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