喫茶ロビー
オルガン音楽のすすめ
井樋 栄二
1,2
1東北労災病院院長
2東北大学名誉教授
pp.264-264
発行日 2023年3月1日
Published Date 2023/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei74_264
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オルガンというと小学校で昔使われていた足踏みオルガンを思い出す方が多いのではないでしょうか.ヨーロッパではオルガンといえばパイプオルガンをさします.パイプオルガンはパイプに空気を送り込むことで音を鳴らす楽器で,原理は縦笛と同じです.ただし縦笛と違って,1本のパイプは1種類の音しか出せませんので,音程の数×音色の数のパイプが必要になります.大きなオルガンでは数千本のパイプを備えています(図1).そして鍵盤をおすとパイプに風が送り込まれ音が鳴りますから,鍵盤はパイプの弁の開閉スイッチで,鍵盤を強くおしても弱くおしても鳴る音は同じです.これがピアノとの大きな違いです.オルガンの音の強弱と音色はストップ(音栓)の選定で決まります.ある音色のストップを引っぱることで,すべての鍵盤でその音色を鳴らすことができます.また,同じ音色でもパイプの長さが半分(1オクターブ高い音)のストップと2倍(1オクターブ低い音)のストップなどを組み合わせることで,オルガンらしい重厚な音をつくることができます.今はモーターがパイプに空気を送ってくれますが,昔は電気がありませんでしたので,人力で「ふいご」を動かすことでオルガンに空気を送り込んでいました(図2).大作曲家ヨハン・セバスチャン・バッハ(Johann Sebastian Bach)の時代も人力でしかオルガンを鳴らすことができませんでしたので,バッハは友人が遊びにくると教会に連れて行ってオルガンのふいごを操作してもらったそうです.最近はバッハというと「ぼったくり男爵」を連想する人が多く,音楽愛好家にとっては残念なことです.
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