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【要 旨】
背 景:肩関節初回前方脱臼に対する保存的治療については,外旋位固定法の有用性が近年の統合解析によって示されている.われわれは外旋位固定と内旋位固定を比較する多施設前向き無作為化臨床試験を行い,2年の短期成績を報告した.本研究の目的は,両治療群の長期成績を比較することである(無作為化臨床試験;エビデンスレベル2).
対象および方法:2000年10月~2004年3月に協力医療機関を受診した肩関節初回前方脱臼198例(平均年齢37歳)を無作為に外旋位固定(ER)群104例と内旋位固定(IR)群94例に割り振った.平均2年の短期調査ができたのは159例(80.3%)であった.本研究では,この159例を対象に2021年1~4月に電話を用いて再調査を行った.調査項目は前回の調査後の再脱臼の有無,再脱臼に対する手術の有無,日常生活での脱臼不安感の有無,スポーツ復帰,可動域制限の有無,Single Assessment Numeric Evaluation(SANE)スコアである.
結 果:平均追跡調査期間は18.2(16~20)年であり,調査可能であった症例はER群27例,IR群29例の56例(追跡率35%)であった.前回の調査時点から本調査までの間に新たな脱臼を経験したのはER群6例(22%),IR群6例(21%)であった(p=0.889).再脱臼に対して手術的治療を受けた症例はER群3例(11%),IR群10例(34%)であり,IR群で有意に多かった(p=0.038).保存的治療の成績不良例(手術例+SANEスコア70%以下)はER群(26%)でIR群(52%)より有意に少なかった(p=0.048).日常生活での不安感,スポーツ復帰,可動域制限,SANEスコアには有意差はなかった.
結 論:外旋位固定を行うことで,長期的にみて手術に移行する患者を減らし,成績不良例を減らせることがわかった.ただし手術に移行しなかった患者間では臨床成績に有意差はなかった.
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