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【要 旨】
目 的:腰椎手術における硬膜損傷の偶発的な発生は一般的であるにもかかわらず,膀胱直腸障害(BBD)との関連性,発生率と予後は不明である.本研究の目的は,腰椎内視鏡手術中の偶発的硬膜損傷後のBBDの発生率,予後,および危険因子を分析することである.
対象および方法:腰椎内視鏡下手術を受けた2,421例の患者を分析し,手術中に偶発的な硬膜損傷を起こした後にBBDを発症もしくは悪化した患者を調査した.排尿障害と排便障害の程度から,重度,軽度,BBDなしの3群に分けた.排尿障害は,術前と術後の排尿後残尿を,超音波膀胱スキャナーまたは膀胱カテーテルを用いて測定した.排便障害は,主観的な症状の悪化と,投薬の頻度と期間の増加で評価した.BBDの危険因子は,基本的な患者情報以外に硬膜損傷部位と硬膜管からの馬尾露出の有無を手術ビデオ記録を用いて分析した.BBD患者は予後判定のために前向きに追跡調査を行った.
結 果:硬膜損傷の発生率は6.9%(168/2,421例)であった.硬膜損傷あり・なしにかかわらない全体のBBD発生率は3.0%(73/2,421例)であり,偶発的な硬膜損傷によるBBD(軽度+重度BBD),重度BBDの発症率は,それぞれ1.2%(30/2,421例),0.8%(20/2,421例)であった.硬膜損傷のある患者と損傷のない患者におけるBBDの発生率は,それぞれ17.9%(30/168),1.9%(43/2,253)で,発生に有意差があった(p<0.001).術後1週間,1ヵ月,3ヵ月,6ヵ月,1年後のBBD残存罹患率は,それぞれ64.0%,44.0%,40.0%,28.0%,13.6%であった.男性であること[オッズ比(OR),4.20],中央部での硬膜損傷(OR 10.15),馬尾の露出(OR 51.04)が有意な危険因子であった.
結 論:腰椎内視鏡手術における硬膜損傷の発生率は,BBDの発生率の増加と関連していた.偶発的な硬膜損傷によるBBDの回復率は一般的に良好であるが,一部の患者は長期的な症状を呈する.馬尾の露出を伴う硬膜管中央部での硬膜損傷が術後BBDのリスクを高める可能性があることを認識すべきである.
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