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は じ め に
「Keegan型頚椎症」という言葉は,上肢近位筋萎縮が顕著で,痛みや感覚障害が軽微な頚椎症という意味でわが国では使用されているが,欧米では頚椎症性筋萎縮という言葉が一般的に使われている1 ).Keeganは1965年に剖検例から脊髄症のない近位筋萎縮は前根の選択的圧迫が原因の神経根症であると結論づけた2 ).頚椎症性筋萎縮は臨床症候による概念であり,近位筋萎縮(C5とC6障害)と遠位筋萎縮(C7とC8障害)があり,その原因は神経根症でも脊髄症でも,両者の合併であってもよい3,4 ).一方で「C5麻痺」は頚椎手術後の合併症として使用されている言葉であり,上腕二頭筋筋力低下の有無にかかわらず三角筋が徒手筋力テスト(MMT)で1レベル低下したものと定義する報告が多い5 ).原因が解明されず定義が定まらない「C5麻痺」という言葉が一人歩きして,「頚椎症で肩があがらない」=「Keegan型頚椎症」=「C5麻痺」=「C5障害」と考えられていることが多い.Keeganの時代から比べるとCT,MRIが普及して画像診断は格段に進歩したが,椎間孔狭窄所見が高度であっても無症状の場合が多く,椎間孔狭窄所見が軽度の神経根症もあり,狭窄所見が明らかな高位が責任高位とは限らない.また,多椎間椎間孔狭窄例や脊柱管狭窄による脊髄症合併例があり,近位筋萎縮の責任高位診断は必ずしも容易ではない.
当科では高位診断と保存的治療のために日常的に頚部神経根造影・ブロックを行っている6 ).痛みを伴って発症した神経根症が原因の近位筋萎縮に対しては,神経根造影・ブロックで確実な高位診断と狭窄部位診断が可能である.高位診断が確定した神経根症による近位筋萎縮例と当科での術後C5麻痺例を検討して,術後C5麻痺の病態・予防について考察した.
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