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連載 卒後研修講座
電気生理学的手法を用いた頚椎・胸椎部脊髄症の診断
Diagnosis using electrophysiological tests for cervical and thoracic myelopathy
中西 一義
1
K. Nakanishi
1
1日本大学整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Nihon University School of Medicine, Tokyo
キーワード:
motor evoked potential
,
central motor conduction time
,
transcranial magnetic stimulation
,
myelopathy
,
F wave
Keyword:
motor evoked potential
,
central motor conduction time
,
transcranial magnetic stimulation
,
myelopathy
,
F wave
pp.991-995
発行日 2021年8月1日
Published Date 2021/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei72_991
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は じ め に
頚椎部,胸椎部での圧迫性脊髄症を診断し,その脊髄障害の程度を正確に把握することは,適切な治療を行ううえで重要である.従来,圧迫性脊髄症は症状や身体所見,MRI,脊髄造影検査などの画像検査により診断されてきた.しかし症状や所見が典型的でない場合や,他高位の脊椎障害がある場合,あるいは末梢神経障害や四肢の関節障害が合併する場合など,重症度の評価が困難な症例は決して少なくない.圧迫性脊髄症の治療の遅れは,症状の進行をまねくおそれがあるため,これを回避できる脊髄機能評価法が望まれる.
1985年,Barkerらにより経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation:TMS)による非侵襲的大脳皮質運動野刺激法が開発され1),中枢運動伝導時間(central motor conduction time:CMCT)の計測法が確立されるにいたった2).TMSによる運動誘発電位(MEP)の潜時と末梢神経の伝導時間との差より算出されるCMCTは,整形外科領域においては圧迫性脊髄症の脊髄機能評価に応用され,重症度を定量的に判定できる優れた非侵襲的検査法とされている.
本稿では圧迫性脊髄症の診断におけるMEP検査,特にCMCTについて紹介し,これまでわれわれが行ってきたCMCTの遅延する機序や,胸椎部圧迫性脊髄症などへの応用に関する研究結果を交えて述べる.
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