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はじめに:おぶせスタディ立ち上げの背景
わが国は世界に冠たる長寿国であり,2019年時点で平均寿命は男性81.4歳,女性は87.5歳にまで延びている1).一方で少子化は急速にすすんでおり,高齢化率(65歳以上の割合)が28.4%(2019年)に達した超高齢社会である2).高齢化率の今後のさらなる上昇は決定的で,2040年には35%程度となると予想される2).ところで,健康寿命,つまり「日常的に介護を必要とせず,心身ともに自立して暮らせる期間」は男性72.1年,女性74.8年であり,平均寿命と健康寿命の差は男性で9年,女性では13年ほど存在している3).2000年の介護保険制度施行以来,要介護認定者数は増え続け,当初全国で220万人程度であった要介護(要支援)認定者は10年後の2010年には500万人を突破,2019年の時点で650万人を超えた4).わが国は高齢者大国であると同時に,要介護者大国ともなっている.
このような状況においては,当然のごとく要介護を未然に防ぐ試みが必要となる.特に,高齢者が多い自治体では重要な課題となる.全国でも長野県は高齢化がすすんでいる県の一つであり,高齢化率は32.3%(2020年)に達する5).要介護予防というテーマにおいて,長野県における住民コホートの構築・調査はわが国の5~10年先の状況を反映する指標となる.2014年,当大学医学部運動機能学教室と当大学医学部付属病院リハビリテーション部は県内自治体の一つで県庁所在地である長野市の郊外に位置する小布施町,および新生病院(小布施町)と共同し,「運動器疫学研究おぶせスタディ」を立ち上げた.県内における本格的,包括的な住民対象運動器疫学調査プロジェクトの旗揚げであった.
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