誌説
COVID-19からの医療デジタルトランスフォーメーション
名井 陽
1
1大阪大学医学部附属病院未来医療開発部未来医療センター教授
pp.212-212
発行日 2021年3月1日
Published Date 2021/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei72_212
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本稿を書いている2020年11月の終わり,巷では新型コロナウイルス感染症が流行の第3波を迎え,再び保健所や医療機関の体制ひっ迫が危惧されている.思い起こせば3月,4月ごろの第1波では全国で1日数百人の新規患者数の集計があったにもかかわらず,保健所からのPCR結果はFaxを利用して集計されていたため集計の遅れや間違いが話題となり,きわめて “アナログ” な行政の状況が露呈した.また,コロナ禍は,少なくともわが国ではあたり前ではなかった「テレワーク」を現実の世界に無理やり持ち込み,中には100%テレワークの会社が出現したり,大手人材派遣会社がメインオフィスを淡路島に移転するなど,ビジネスの世界に大きな変革をもたらし始めている.しかしその一方で,捺印のために出勤せざるをえないといった企業や,書面による処理が多すぎて,結果,事務職はテレワーク不可となっている公官庁も多いと聞く.また,遅れているわが国のキャッシュレス決済を推進するために2019年に行われたポイント還元キャンペーンにも増して,COVID-19の流行は非接触で支払いができるいわゆる「スマホ決済」を推しすすめる結果になったといえよう.そんな中,2020年9月に発足した菅内閣がデジタル庁の設置を決めるなど,行政がさらにこのデジタル化の波を推しすすめようとしている.
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