Japanese
English
臨床室
脳梗塞急性期との鑑別を要した特発性頚髄硬膜外血腫の1例
Spinal epidural hematoma mimicking a cerebral infarction:report of a case
喜多 晃司
1
,
海野 宏至
1
,
池村 重人
2
,
藤原 達彦
3
,
佐藤 昌良
1
,
湏藤 啓広
3
K. Kita
1
,
H. Unno
1
,
S. Ikemura
2
,
T. Fujiwara
3
,
M. Sato
1
,
A. Sudo
3
1伊賀市立上野総合市民病院整形外科
2松坂市民病院整形外科
3三重大学大学院整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Iga City General Hospital, Iga
キーワード:
spontaneous cervical epidural hematomas
,
hemiparesis
,
conservative treatment
Keyword:
spontaneous cervical epidural hematomas
,
hemiparesis
,
conservative treatment
pp.117-119
発行日 2021年2月1日
Published Date 2021/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei72_117
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
脊髄硬膜外血腫は,脊髄硬膜外腔に血腫が形成され,脊髄が圧排されることで神経症状を呈し緊急性を要する疾患である.比較的まれな疾患であり,脊髄の圧迫性病変に伴う対麻痺や四肢麻痺以外にも片麻痺を呈することがある.麻痺の程度や分布はさまざまであり,脳卒中との鑑別に苦慮することが多く,救急現場での診断,治療に難渋することも多い.
2005年10月から発症3時間以内の脳梗塞超急性期患者に対する遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)静注療法が保険適用となり,さらに2012年からt-PA実施可能時間が4.5時間へ延長されt-PA実施例は増加しつつある.T-PA静注療法は,発症から薬剤投与開始までの時間が早いほど転帰改善効果が期待できることから,投与までの時間を短縮するためさまざまな取り組みがなされる1).しかし,時間的制約があるため,投与を急ぐがゆえの問題点,つまり脳梗塞に類似した症状を呈する非脳梗塞例に対してt-PA静注療法を行ってしまう可能性も指摘される2).特に出血性疾患に対して誤ってt-PA投与をしないことが重要であり,その代表疾患として頚髄硬膜外血腫があげられる.
本稿ではt-PA静注療法を考慮し,迅速に検査を行うなかで頚髄硬膜外血腫と診断しえた1例を経験したので報告する.
© Nankodo Co., Ltd., 2021