Japanese
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臨床室
多発外傷後に診断の遅れにより遅発性下肢麻痺をきたしたびまん性特発性骨増殖症の1例
Late-onset paralysis due to delayed diagnosis in diffuse idiopathic skeletal hyperostosis after multiple injury;report of a case
葛原 茂樹
1
,
岡崎 廉太郎
1
,
東 成一
1
S. Kuzuhara
1
,
R. Okazaki
1
,
S. Azuma
1
1さいたま赤十字病院整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Saitama Red Cross Hospital, Saitama
キーワード:
delayed paralysis
,
delayed diagnosis
,
multiple injury
Keyword:
delayed paralysis
,
delayed diagnosis
,
multiple injury
pp.861-865
発行日 2020年7月1日
Published Date 2020/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei71_861
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びまん性特発性骨増殖症(DISH)は,65歳以上の高齢男性に多く,椎体前方を架橋する骨棘形成,骨結合性変化を呈する疾患である.主に下位胸椎から発生し,上位胸椎や腰椎へと骨化が波及し,靱帯や靱帯付着部の骨化,強直により可動域が減少する病因不明の疾患とも報告されている.
DISHを伴う脊椎骨折は不安定性が強く,急速な麻痺の出現がしばしば問題になる.高齢化がすすむ日本社会においてDISHを伴う脊椎骨折例は増加傾向である.特に広範囲に後縦靱帯骨化症(OPLL)を合併し高度変形を伴うDISHは骨折が不明瞭で,画像所見のみでは骨折の診断が困難であることもあり,診断の遅延につながってしまう.また,患者の全身状態によっては正確な身体所見をとることに難渋することがある.病院搬送直後に意識障害があれば画像所見のみで判断せざるをえない場合もある.多発外傷であれば,ほかの病変部に注意がいき,重大な脊椎骨折を見逃す可能性がある.本例は遅発性麻痺の出現があり,後方固定による手術的治療を行ったが,明らかな麻痺の改善が得られなかった.今後も同様の事象が起こる可能性があり,診断の遅れにより遅発性麻痺を生じたDISHを経験したため警鐘をならす意味で文献的考察を加えて本症例を報告する.
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