整形トピックス
統合オミックス解析による関節リウマチ関連遺伝子の同定
鈴木 亜香里
1
1理化学研究所生命医科学研究センター
pp.1180-1180
発行日 2020年10月1日
Published Date 2020/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei71_1180
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全ヒトゲノムが明らかになり,ヒトのゲノムには数多くの多型が存在することが判明した.多型を用いた疾患遺伝子の同定方法として,全ゲノム関連解析(genome-wide association study:GWAS)が大規模に行われるようになり,疾患リスク多型の同定に伴い,疾患関連遺伝子も数多く同定された1~3)(図1).それにより明らかになったのは,GWASにより,疾患と関わるゲノム上の多型(疾患リスク多型)の位置がわかることが,疾患の発症を直接説明できるわけではない,という事実であった.疾患リスク多型の多くはすでに知られていた疾患遺伝子に存在せず,またアミノ酸変化のようなタンパク質の性質が変わるような変化を伴う多型は少なかった.また,疾患との機能的なかかわりが不明であったり,機能もわからない遺伝子であったり,その多くはタンパク質をコードする遺伝子の外に存在しているものが多数であった.基本的に遺伝子型は最初の授精した細胞から死ぬまで変わらないため,遺伝子型は人間の基本的な性質を形づくる設計図であり,GWASにより同定されるものは因果関係上,必ず原因である.原因がわかれば,病気がなぜ起こるのか明らかになる,という考えのもとGWASは行われたが,もともとヒトがもつ遺伝的な背景は非常に複雑であること,ヒトの細胞,組織,体の機能を形成し,維持し,その後疾患に結びつく変化はかなり複雑な経緯をたどる反応であり,原因(遺伝子)だけでつくられるものではなく,環境的な要因(生活環境をはじめとする環境的なもの)より影響を受けて変化するものであるため,1対1で病気の原因としての疾患リスク多型と発症が結びつくものではなかった.
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