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【要 旨】
目 的:両十字靱帯温存型人工膝関節全置換術(bicruciate-retaining total knee arthroplasty:BCR-TKA)は,前十字靱帯(ACL)を温存することによって優れた膝安定性と正常膝動態の模倣が期待されている一方,その靱帯機能は明らかでない.本研究の目的は,BCR-TKAにおけるACL機能を解明することである.
対象および方法:膝関節の6自由度の位置と力を任意に制御可能な関節力学試験ロボットシステムを用い,未固定凍結人体標本8膝に対し解析を行った.屈曲0°~120°の他動屈曲・伸展時のキネマティクスと,0°,15°,30°,60°,90°における前後方動揺性を,同一膝の3状態(intact,BCR-TKA,ACL切離後BCR-TKA)において計測し比較した.また各試験においてACLに生じる張力を求め,intactとBCR-TKAで比較した.
結 果:BCR-TKAの他動屈曲伸展時のキネマティクスはintactと同様のパターンを示したが,大腿骨は前方に位置していた.ACL切離後は膝伸展位付近で有意に大腿骨が後方へ変位した.BCR-TKAの前後方動揺性はいずれの屈曲角度においてもintactと同等であり,ACL切離後は2倍以上に増大した.BCR-TKAにおけるACL張力は,他動伸展時は中間屈曲域においてintactと同等であったが,完全伸展位と完全屈曲位付近では有意に大きかった.前方力負荷時のACL張力は,全可動域でintactと同等であった.
結 論:BCR-TKAにおいて温存したACLは,前方引き出しに対してintact膝と同等に機能し,前方制動性に大きく寄与していた.しかし屈曲・伸展時のキネマティクスとACL in situ forceはintact膝と一部異なっていた.通常の手術方法では,屈曲・伸展時のACLの過緊張を引き起こす可能性があり,インプラントデザインや手術手技改良の必要性が示唆された.
© Nankodo Co., Ltd., 2020