Japanese
English
連載 革新的技術がもたらす小児運動器難病の新展開――基礎から臨床へ
小児整形外科研究の進歩
Recent advancement of pediatric orthopedic research
戸口田 淳也
1
J. Toguchida
1
1京都大学ウイルス・再生医科学研究所
1Institute for Frontier Life and Medical Sciences, Kyoto University, Kyoto
キーワード:
skeletal genetic disorder
,
precision medicine
,
disease-specific iPS cell
Keyword:
skeletal genetic disorder
,
precision medicine
,
disease-specific iPS cell
pp.1108-1109
発行日 2020年9月1日
Published Date 2020/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei71_1108
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は じ め に
少子高齢化が叫ばれて久しく,整形外科が扱う疾病も加齢変性疾患が大半を占めており,小児整形外科専門外来を設置している大学病院の数も少なくなりつつある.筆者が1981(昭和56)年に入局した際,最初に手術に参加した症例はSalter式骨盤骨切り術であり,病棟には先天性股関節脱臼に対する持続牽引の乳児患者が常時数名いたように記憶している.現在このような症例は小児整形外科専門施設でしか経験することができないのかもしれない.しかし未来の世界を担う子どもたちの健康を守る医療としての小児医療の重要性は高まることこそあれ,その価値が下がることはない.その中でも小児整形外科領域は,治療後の成長に伴う課題を考慮しなければいけないという特色をもつ.典型的な問題が,悪性骨腫瘍に対する人工関節置換術における術後の健側の成長に伴う脚長差や,先天性側弯症に対する矯正固定術後の脊椎成長障害であり,それぞれ伸長可能な人工関節や,vertical expandable prosthetic titanium rib(VEPTR)システムが開発されてきた.一方,基礎医学の進歩により診断や病態の理解に関する知見が深まり,さらに治療法の開発にも寄与する成果も発表さている.
そこで小児整形外科に関する基礎医学から臨床におけるトピックをそれぞれの専門家に紹介していただき,広く一般の整形外科医の方々に小児整形外科の進歩を知っていただくことを目的として本連載を企画した.本稿では,まず小児整形外科に関する研究の発展のキーとなる技術革新とその応用を概説する.
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