5．野球肘・肘内障

Baseball elbow and pulled elbow

は じ め に

　野球肘は投球動作により肘関節周囲に生じる障害の総称である．肘関節屈曲位でボールを投球する際，肘内側には外反力が加わり，内側側副靱帯が牽引されることにより上腕骨内側上顆裂離や靱帯損傷，尺骨神経障害が生じる．肘外側には圧迫力が加わることにより上腕骨小頭や橈骨頭の骨軟骨障害，あるいは滑膜ヒダ障害が生じる．また，肘後方にも牽引力や圧迫力が加わり，肘頭に骨端離開，骨端軟骨閉鎖不全，疲労骨折や骨棘を生じることも知られている．野球肘は野球以外でも肘関節に牽引力や圧迫力が加わることにより発生する．

　肘内障はpulled elbowと呼ばれ，親が子の手を引っ張ったことにより生じる橈骨頭周囲の輪状靱帯や回外筋の嵌頓障害であるが，実際には明らかな牽引による発症は半数にとどまり，さまざまな受傷機転により発症することを認識する必要がある．